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★2012-12-3★
中央道トンネル事故はISO39001で防げるの?

 昨日(2012年12月2日)に、中央自動車道上り線笹子トンネル(山梨県)で発生した、コンクリート製の天井板崩落した事故について、ISO39001に関連して私見を記載したいと思います。

 この場で、責任の所在等を議論するつもりもありませんし、そのような権限もありません。ただ、今回の事故が“起こり得る可能性”とISO39001の中心部分である“6.3パフォーマンスファクタ”との関連を見てみましょう。

 今回の中央自動車道での事故発生の着眼点として、
  ① トンネルの設計に問題はなかったのか?
  ② トンネルの維持管理(経年劣化に対する処置を含む)に問題はなかったのか?
  ③ 万が一の事故発生に備えて、救助活動は想定してあったのか?

 以上、三つの着眼点のうち、“①” と “③” については、ISO39001の “6.3パフォーマンスファクタ”の中に規定があります(日本語訳は筆者独自のもの)。その内容は、

  ・重傷事故・死亡事故が起こりにくい道路設計・・・

  ・衝突後(事故発生後)の対応と応急処置、緊急事態への準備・・・

 まさに、ズバリの項目がありますね。そして、ズバリの項目がない“②”についても、
ISO39001では、例示としてISO39001に挙がっていない場合は “追加のパフォーマンスファクタ” を開発しなくてはならないことが要求されています。

 要するに、今回の中央自動車道上り線笹子トンネルで発生した事故について、ISO39001における管理項目が存在しているのです。

 でも、ここで一つ考えてみましょう。当該、中央道を管理している中日本高速道路会社がISO39001を導入済みであった場合、今回の事故は回避できたのでしょうか?(実際、中日本高速道路会社は、ISO39001に取組中とのこと)

 ISO39001に携わる者としては、「当然、防ぐことができた」と申し上げたいのですが、それは微妙です。

 前述したISO39001のパフォーマンスファクタの一つである、“ ・重傷事故・死亡事故が起こりにくい道路設計・・・” に対する “① トンネルの設計に問題はなかったのか?” ですが、設置から30年以上経過しており、現在取り組んでいるISO39001は、過去の道路の設計・設置について、どこまで遡る(さかのぼる)必要性があるのか?という疑問が残ります。
 ISO39001のしくみが完成し、運用後に新規に設計・設置する道路については、当該項目が当てはまるのでしょうが。

 次に、“ ・衝突後(事故発生後)の対応と応急処置、緊急事態への準備・・・” に対する “③ 万が一の事故発生に備えて、救助活動は想定してあったのか?” ですが、昨日の事故発生直後に実際、どのような処置がなされたのか今後検証されていくと思われます。

 具体的にナニを検証するのでしょうか?当然、緊急事態発生における「PDCA」を検証されるでしょう。

 まず、ISO39001の要求事項にもあるように、緊急事態としてナニを想定し、発生を予防して緩和するしくみがあったのか?・・・P(計画)

 仮に、しくみが存在していた場合、そのしくみ通りに行動したのか?・・・D(実施)

 その後のP(検証)、A(改善)は、現時点では不明ですね。

 最後に “② トンネルの維持管理(経年劣化に対する処置を含む)に問題はなかったのか?” についてですが、ISO39001のしくみが完成し、導入済みであれば、当然のパフォーマンスファクタかもしれませんね。

 中日本高速道路会社も点検はしていたようですが、その一部は残念ながら目視による点検であり、維持管理方法として万全であったのかは不明です。しかし、このような事故が起きてしまうと結果論として、「こうすべきであった」等の意見が出されますが、本当に最初から当該事故を予見できるのか?という疑問が残ることも事実です。

 今回の事故で被害にあわれた被害者、ご遺族の方にとりましてはとんでもないことであり、今後、責任の所在が追究されますが、ここでの私の意見は控えさせていただきます。

 結論として、今回の事故は、ISO39001が導入・運用済みであったら防ぐことができたのか?回答としては、防ぐことができる確率が増えることは間違いありませんが、完璧とはいかないこと。そして、何よりもISO39001を運用するのは、ヒトであること。

 要するにISO39001を運用する人々によりどうにでもなってしまうこと。
 どんなにすばらしい、しくみや設備・機械・車輛を導入しても運用するのはヒトであり、そのヒトは、組織風土でどうにでもなってしまうことです。

 どんなにすばらしいしくみや、優秀なヒトで構成する立派に見える組織であっても、問題発生時に結果的に個人の責任にならない組織であれば、結局は「他人ごと」であり、真剣な運用は期待できないのではないでしょうか(今回の事故のことを言っているのではありませんが)。

 以上のように考えると、今回の事件は広義では、「ヒューマンエラーが引き起こした事故」と言えるのかもしれません。

  「ヒューマンエラーで事故防止」というと「運輸安全マネジメント」であり(中日本高速道路会社は運輸安全マネジメントの対象外ですが)、ISO39001では、「ヒューマンエラー」という文言は削除されいますが、ヒューマンエラー防止は非常に大切ですね。
 
 昨年、交通事故先進国であり「ビジョンゼロ」という交通事故防止の仕組みを国策として導入し、成果を挙げているスウェーデン訪問時に「ビジョンゼロ」のスウェーデン道路交通省の責任者の言葉を思い出しました。

  「ヒトは、ヒューマンエラーを起こす動物であり、そのようなヒューマンエラー
  を防ぐことは非常に難しい。ただ、道路の設計・構造上の問題は、広義では
  ヒューマンエラーであり防ぐ余地はたくさんある。」
                          スウェーデン道路交通省 アンダッシュ氏
★2012-12-3★

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